「奮発して買った大切なブランドバッグ、絶対に汚したくない。」
そう考えてガラスコーティングを検討されている方も多いのではないでしょうか。
スマホの画面保護でおなじみのガラスコーティングですが、実はバッグ、特に革製品に行うと取り返しのつかないデメリットが生じる可能性があることをご存知ですか?
「知らずに施工して、革がひび割れてしまった…」
「正規店での修理を断られてしまった…」
そんな後悔をしないために、ここではバッグの修理・メンテナンス業界の視点から、バッグのガラスコーティングのリスクと、コーティングに代わる「本当に正しいバッグの守り方」を徹底解説します。
この記事でわかること
- ガラスコーティングがバッグに不向きな5つの理由
- ハイブランド(エルメス・ヴィトン等)の公式見解とリスク
- 施工して失敗した事例とリアルな声
- コーティングなしでバッグを完璧に守るプロの裏技
バッグのガラスコーティングにおける5つの致命的なデメリット
ガラスコーティングについて調べていると、「デメリット」「失敗」「ひび割れ」といった不安な言葉を目にすることがあります。実際に、こうしたトラブルは決して少なくありません。
特に本革(レザー)のバッグへのガラスコーティングは推奨できません。主なデメリットは以下の5つです。

1. 革の「呼吸」を止めてしまい、寿命を縮める
本革は、動物の皮から作られた「生きている素材」です。適度な水分と油分を出し入れ(呼吸)することで、あのしなやかさと美しさを保っています。
しかし、ガラスコーティングはその名の通り、表面を「ガラス質の硬い被膜」で覆ってしまいます。
コーティング膜が毛穴を塞ぐことで、革が必要とする保湿クリームやオイルが浸透しなくなります。結果として、革の内側から乾燥が進み、数年後にボロボロに崩れる原因となります。
2. 表面がひび割れ(クラック)を起こす
スマホのような「硬いもの」と違い、バッグは使用中に何度も曲がったり歪んだりする「柔らかいもの」です。
柔軟性のある革の上に、硬いガラスの膜を張るとどうなるでしょうか?
バッグの開け閉めや、持ち歩く際の振動で革が動くたびに、表面の硬いコーティング層が耐えきれず、蜘蛛の巣状の細かいひび割れ(クラック)が発生します。一度割れてしまうと、そこから汚れが入り込み、見栄えが極端に悪くなります。
3. ブランド正規店の「修理保証」対象外になる
これが最も経済的なダメージが大きいデメリットです。
ルイ・ヴィトン、エルメス、シャネルなどのハイブランドは、製品の品質を保証するために充実したリペアサービスを提供しています。
しかし、社外でガラスコーティングを施したバッグは「改造品」とみなされます。
| 状態 | 正規店での対応 |
|---|---|
| 購入そのままの状態 | ⭕ 修理・パーツ交換・メンテナンス受付可 |
| ガラスコーティング施工後 | ❌ 受付拒否(改造品扱い) |
「ファスナーが壊れた」「持ち手が取れた」といった、コーティングと関係ない故障であっても、「純正の状態ではない」という理由ですべての修理を断られるリスクが非常に高くなります。
4. 買取価格(リセールバリュー)が暴落する
将来的にバッグを売ることを考えているなら、ガラスコーティングは絶対に避けるべきです。
中古ブランド市場において、社外加工が施されたバッグは「ジャンク品」に近い扱いを受けます。
買取業者から見れば、「後から剥がせない膜が張られているバッグ」は再販売時のリスクが高すぎるため、査定額が大幅に減額される、あるいは買取不可となるケースがほとんどです。
5. 独特の質感・風合いが変わってしまう
ラムスキン(羊革)のような吸い付くような手触りや、エルメスのトゴのような繊細なシボ感。これらは革本来の魅力です。
ガラスコーティングを施すと、表面がわずかにプラスチックのような質感になり、「なんとなく安っぽくなった」「手触りが硬くなった」と感じるオーナー様が少なくありません。
ハイブランドバッグ別:ガラスコーティングの相性診断
「私のバッグなら大丈夫かな?」と迷っている方へ。主要なハイブランドの素材ごとに、ガラスコーティングの相性をプロの視点でジャッジしました。
| ブランド / 素材 | 相性 | 理由とリスク |
|---|---|---|
| HERMES(エルメス) トゴ・トリヨンクレマンス |
最悪 | 非常に柔らかい革のため、コーティングが割れる可能性大。革本来のふっくらした弾力が失われます。 |
| CHANEL(シャネル) ラムスキン・キャビアスキン |
NG | 特にラムスキンはデリケート。コーティング剤が染み込みすぎて色ムラ(シミ)になる事故が多発しています。 |
| LOUIS VUITTON モノグラム(キャンバス) |
△(注意) | PVC加工されたキャンバス地なので革よりはマシですが、表面がテカテカになり安っぽく見えるリスクがあります。 |
| キャンバストート (布製バッグ全般) |
◯(可) | 布地であれば、撥水効果のメリットを受けやすいです。ただし、ガラスコーティングより防水スプレーの方がコスパは良いです。 |
「ガラスコーティング」の代わりに何をするべき?プロが教える正解ケア
「デメリットはわかったけど、じゃあどうやって汚れや雨から守ればいいの?」
答えはシンプルです。「革の呼吸を止めない、栄養補給と撥水ケア」を行うことです。
数十万円するバッグを何十年も使い続けている愛好家たちが実践しているのは、ガラスコーティングのような「一度きりの加工」ではなく、「定期的なメンテナンス」です。
ここでは、失敗のリスクがなく、ブランド価値も損なわない「最適」のケアアイテムをご紹介します。
【栄養+防水の決定版】ハイブランド推奨の最高級クリーム
ガラスコーティングのように固めるのではなく、革の繊維一本一本にフッ素樹脂を浸透させ、「通気性を保ったまま水を弾く」状態を作るのが正解です。
世界中のラグジュアリーブランドもOEM採用している、ドイツの老舗メーカー「コロニル」の最高傑作がこちらです。
【雨の日対策】絶対にシミを作りたくない人のための最強防水スプレー
「クリームを塗るのは面倒」「スエード素材だからクリームは塗れない」という方には、スプレータイプがおすすめです。
ただし、安価なシリコン系スプレーは絶対にNG。革の呼吸を止めてしまいます。選ぶべきは「フッ素系」の防水スプレーです。
価格:¥980〜 (税込・変動あり)
この商品は水も油も弾くフッ素樹脂配合なので、雨水だけでなく、食事中の油ハネや手垢汚れからもバッグを強力にガードします。
革・スエード・キャンバスなど多用途対応のため、これ1本あれば、お持ちのブランドバッグからスニーカーまで全てまとめてケアできます。
それでもコーティングしたい?「自分(DIY)」vs「専門店」の値段とリスク比較
ここまで読んで「やはりガラスコーティングの硬度で守りたい」と考える方もいるかもしれません。その場合、自分でやるか、専門店に頼むか、どちらが良いのでしょうか。
値段の比較
| 方法 | 費用の目安 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 自分で施工(DIY) | 3,000円〜5,000円 (溶剤代) |
とにかく安い。 手軽に試せる。 |
失敗したら終わり。 ムラになりやすく、保証ゼロ。 |
| 専門店に依頼 | 15,000円〜50,000円 (バッグのサイズによる) |
プロが均一に塗ってくれる。 事前クリーニングがある。 |
高額。 店舗への持ち込み・郵送の手間。 |
自分でガラスコーティングをする際のリスク
Amazonなどで「ガラスコーティング剤」が販売されていますが、多くは「スマホ用」や「車用」です。
これらをバッグに流用すると、溶剤が強すぎて革が変色したり、乾燥速度が速すぎて塗りムラ(白い筋)になったりします。
「バッグ用」として販売されているものでも、素人が立体的なバッグに均一な厚さで塗るのは至難の業です。
一度硬化したガラス被膜は、リムーバー等で溶かして落とすことができません(革まで溶けてしまうため)。「失敗したからやり直す」ことができない一発勝負であることを覚悟する必要があります。
よくある質問(Q&A)
- Q1. ナイロン製のプラダのバッグならコーティングしてもいい?
- A. ナイロン素材であれば、革のような「呼吸」や「ひび割れ」のリスクは低いため、比較適しています。ただし、生地の柔軟性が失われ、バリバリとした質感になる可能性があります。まずは目立たない底面などで試すことを強くお勧めします。
- Q2. すでにコーティングしてしまったバッグの被膜は落とせる?
- A. 残念ながら、安全に完全に除去する方法はほぼありません。無理に剥がそうとすると革の表面(銀面)まで剥がれてしまいます。自然に摩耗して薄くなるのを待つか、革修理専門店で「リカラー(色のかけ直し)」を相談するしかありません。
- Q3. ガラスコーティングの効果期間は?
- A. 一般的には1年〜3年と言われていますが、バッグは摩擦が多いため、角や持ち手部分は数ヶ月で効果が薄れることが多いです。効果が落ちてきた時に、部分的に剥がれて汚く見えるのもデメリットの一つです。
まとめ:大切なバッグだからこそ「異物」で覆わない選択を
バッグへのガラスコーティングは、「傷をつけたくない」という一心で行われることが多いですが、革製品にとっては「寿命を縮める」「正規サポートを受けられなくなる」「資産価値を下げる」というあまりに大きな代償を伴います。
ハイブランドのバッグが美しく長持ちするのは、上質な革が呼吸をしているからです。
その呼吸を止めるのではなく、「上質なクリームで栄養を与え、フッ素で優しく守る」ケアこそが、10年後も美しい状態を保つための唯一の正解です。
ぜひ今日から、正しいケアアイテムで愛用のバッグを労ってあげてください。
\ プロも愛用する失敗しないケア /





